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コラム科  競馬 激辛放談
 辛口コラムでスキッと爽快

 週1回、木曜日掲載、スカッとしたいときに服用

 やけどにご注意ください


 栗東・松永善晴厩舎所属の現役調教助手・稲垣茂が、競馬界に留まらず、社会の矛盾などを評論する辛口コラム。激しい論調になることもあるが、その内容は極めて正論。文量はあるが、すらっと読めてしまうほど高い文章構成力、そしてはっきりした物言いから、高い人気を誇る。

 ナイスネイチャやイブキマイカグラなど多くの人気馬に調教をつけてきた調教助手。それでいて文章のうまいこと。ボクらも舌を巻いちゃうその内容は一見、過激なようでいて、その中心にある「悪いものは悪い、正しいものは正しい」という一貫した姿勢にはとても共感させられます。なんて、稲垣さんにつられて、こんな文章になってもうた(苦笑)。


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稲垣 茂【競馬激辛放談】
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第241回  競争することで進歩がある

<調教の見方、捉え方>

「調教師を目指している人間ならともかく、そうでないのならば、調教専業よりも持ち乗りのほうがずっといい」

 今では押しも押されもせぬ大調教師となった某氏の若かりし頃の言葉である。
 これは攻め専などと呼ばれる調教を主に担当する調教助手よりも、厩務員を兼ねる持ち乗り調教助手のほうが遙かに経済的に恵まれているということを言っているわけだが、確かに厩務員の待遇と比べ、調教助手のそれはなおざりにされてきたと言って良い。
 これは、ひとえに待遇改善に熱心な人間が厩務員には多く、それに対して調教助手はそうでなかったためであるのだ。これは言い換えれば、厩務員のほうが組合活動に力を入れてきた結果なのである。
 遅ればせながら調教助手も待遇改善へ向けて頑張るようになったが、時すでに遅し。すでに馬券の売り上げも峠を越した感があり、それに充てる原資もない。ものにはタイミングがあるという良い例だろう。

 ところで、今月から組合役員の仕事を任されることになった。
 私が所属するところは厩務員中心の組合であるため、助手の待遇改善のために役員に就任してもらいたいとの要望が数多く寄せられたためだ。
 役員となるとあちこちの会合に顔を出すことになる。そこで感じたことは、もう少しなんとかなるかと思っていたものの、世の中そんな簡単なものではないということ。昨今叫ばれるようになった競争原理を導入すると、ともすれば弱者切り捨てになる。そうならないまでも弱者にしわ寄せが来ることになりがちなのである。
 厩務員であれば高齢で給料が高い者、体が動かない者、助手であれば技術的にレベルの低い者、体重が重い者などが真っ先にその対象となる。
 すでにそれで仕事をして、生活の糧としている人間ばかりであるだけに、競争原理の導入をしつつ、それでいながらできうる限り、弱者にしわ寄せが来ないようにすることの難しいこと。
 よその社会では当たり前のことが競馬界でも行なわれようとしているわけだが、そんな大変な時代になったこと競馬サークルの人間が理解しているものかどうか。それが怪しげなだけに憂鬱になってしまうのである。

 なぜこんなことを書いたかというと、先日の衆議院選挙の結果が出たからである。
 栗東トレセンのある投票区は、純粋にトレセン関係者居住区住民だけで構成されている地区であり、そこの結果は競馬サークルの政治への関心度の現れと言っても良いのであるが、肝心の投票率は栗東市内では断然の最下位で、僅か46.2%に過ぎなかったのである。(これでも前回よりは5ポイントも上がっているのである)
 自分たちさえ良ければそれで良い、自分たちのお尻に火がつきでもしなければ動かない、火がついているのに気がついていないのではないかという状況を見るにつれ、こんなことでは競馬サークルの先行きも不安と思わざるを得ないのである。
 政治に無関心なのも感心しないが、政治に無関心な人間は何事にも無関心なのではないかと私は推測している。そんな人間なら今後の競馬のあり方やファンサービスにもきっとそれほどの興味を持っていないであろうと思われるから、困るのである。

 その点、問題は多々見受けられるが、JRAの場合なんとかしようとの姿勢が伝わってくるだけ良い。
 19日に来年の開催日程が発表されたが、ジャパンCダート、ジャパンCの同日開催、北海道における薄暮レースの実施、見習い騎手の負担重量の見直しなど、目新しい動きもある。
 特に見習い騎手の負担重量の変更と若手騎手限定レースの新設については、下級条件の出走規定の改定によって、早急に改善が必要と考えられていたもので、こういった素早い対応は誉めて良いだろう。
 競馬だけを趣味とする人はまずいない。だからこそ他の公営競技や各種のレジャーとの競争に勝たなくては生き残っていけないのだ。
 ひとつひとつはどうということはないと思われる程度のものであるかもしれぬが、こういったことの積み重ねが大事であり、行く行くはモノを言ってくるのである。

 さて、今週はマイルCSである。
 過去を振り返ると、タイキシャトルやダイタクヘリオスの連覇などはあったが、たいていは混戦となっている。この両馬を除くと、1989年以降1着2着の最大のタイム差がコンマ2秒となっており、そこからも、いかに難しいレースであるかが窺える。
 今年も抜けた馬がおらず、ファンにすれば予想のし甲斐があることだろうが、こんなときだからこそマスコミには望むことがある。
 今回予想が難しくなっている一因は体調の把握がしづらいことにあるのだ。実力が伯仲していればいるほど、調子の良さがモノをいうことになる。
 そんな体調を推し量るのに最も有効なものは調教の動きであり、そして時計であることは言うまでもないが、肝心の調教に関する記事はしっかりしているようで、実は心許ないものばかりなのである。
 今回の出走馬のうち関西馬は11頭を占め、水曜日にそのうち5頭が坂路、5頭がCWコースで追い切り調教を行なったが、この調教の内容がわかりづらいのだ。
 例えばファインモーションは10時過ぎに武豊騎乗で坂路で追い切られたが、53秒5−39秒8−13秒8の時計に伊藤雄二師は「この時間帯だから、そう遅くはない。予定通り、思い通り」とのコメントを残したとされる。また、ミレニアムバイオは同じ坂路で追い切られながら、51秒8−37秒4−12秒3。こちらの関係者は目一杯やれば50秒台は出ただろうと言う。おそらく武豊が言うように「ファインモーションは元々坂路は動かない」のだろうし、またミレニアムバイオが追い切った時間はまだ馬場が良好な状態だったのだろう。しかし、片や53秒5で上がりは一杯一杯との印象の13秒8で、もう一方は目一杯やれば50秒台が出たと言うから、おそらく時間によってかなりの馬場の差があったということは否定できないはずなのである。
 そうか違いがあったのか、とそれで終わってしまっては、ファンも新聞も進歩がない。問題とすべきはどれくらいの差があったのか、そこをファンは知りたいと思うべきであろうし、新聞はそういったことにこそ力を入れて紙面を作るべきなのである。
 具体的にはまず追い切った時間を明示し、ハロンの入った時間や時間毎の調教時計を変化を併せて紹介すれば、それで良い。関係者のコメントも参考にはなるが、何より数字で示すことがわかりやすく好ましいのである。
 調教だけで体調を把握できない場合もあるにはある。しかしもっとも参考にすべきものが調教であり、追い切りなのである。だからこそ新聞も追い切り情報にあれほど大きなスペースを割いているのだ。同じスペースを使うなら、もっと有効に使ってもらいたいということである。
 個人的な調教の評価ではあるが、ファインモーションは時計がかかる馬場状態だったことを考えても、それほど強調できる内容ではなかったと思え、一方ミレニアムバイオにはどんな時間帯だったとしても高い評価を与えても良いと捉えている。ほかに坂路ではデュランダル、ウインクリューガーの順に、そして馬場ではサイドワインダーの調教に好感が持てる。美浦や白井分については馬場状態がよくわからないので、なんとも言えない部分はあるが、テレグノシスとバランスオブゲームが印象的だった。
 調教を見るだけで、即、勝ち組になることは難しいだろうが、予想の精度を上げることはできるはず。予想とは他の予想者との競争なのである。今回の指南もどれほど参考になるかどうかはわからないが、こういうことを常に頭の片隅に置いておけば、勝ち組に近づくことは可能であろう。
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筆者プロフィール
稲垣 茂 (いながき しげる)
写真 名古屋出身 1962年生まれ
これまでにナイスネイチャ・トーヨーリファール・トーヨーシ アトル・トーヨーレインボー・テンザンユタカ・アルファキュート・イブキマイカグラ・オースミロッチ・コンサートマスター・ミスターボーイ・スーパーショット・ビッグショウリ・ハシケンエルドなどの調教を担当。現在は松永善厩舎に所属。

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