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コラム科  心情馬券 1万円“真券”勝負!
 ひと味違う競馬コラムで感動を

 週1回、水曜日掲載

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「優駿エッセイ賞」受賞の実力派ライター・河村清明の馬券勝負ドキュメント。「心情馬券こそ究極の馬券である」という筆者の信念をもとに、毎週自腹1万円で「心情馬券」を購入。心情馬券だからこそ得られる感動と競馬の奥深さを探求する。

 単に「馬券を買って当たりました、外れました」というものとはひと味違うこのコラム。もちろん馬券が当たるに越したことはないんだけど、「心情馬券」なら「勝った負けた」だけではない、競馬の奥深さを感じることができるんだよね。河村さんの文章からは、その馬券の背後にある競馬に関わる人々への思いもヒシヒシと伝わってくるし、このコラムを読めば競馬に対する考えも変わってくるかも。「競馬道OnLine」水曜日のイチオシ!


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河村清明【心情馬券1万円”真券”勝負!】
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■12枚目 さらば、かみのやま競馬よ

 12日の昼前、かみのやま温泉にいた。道路脇にある足湯につかりながら、ぼんやりと前日の競馬を思い出していた。
 山あいのせいか雲の流れが速い。青い空がのぞいたかと思うと、どこからか雲が湧き出て、すぐに灰色に覆いつくしてしまう。
 足湯は思いのほか熱かった。全身にほてりを感じ始めた頃、地元のおばあちゃん二人組が僕の隣に座った。東北なまりの会話は意味がよくわからないが、それでも老婆の口から出てくる言葉は、湯のぬくもりと共にじわりと体に沁みてくるようだった。
 最終日のかみのやま競馬の様子を、どんな言葉で伝えればいいのか、僕は考え続けていた。
 指定席は早々に売り切れていた。
 入場門のところで買った専門紙「KEIBAニュース」は、定価の550円を500円にまけてくれた。
 昼食に入った食堂では、生ビールを始めほとんどのメニューが売り切れており、わずかに残った醤油ラーメンにありつくことができた。
 屋台に立って名物・玉こんにゃくを売るおばちゃんは、「いやァ、さみしいねえ。なんだか涙出るよね」との言葉を僕に向けた。
 名残を惜しむために足を運んだ僕のような競馬好きを含めて、そこにいた全員が、それぞれの立場で、競馬場最後の手ざわりをつかみ取ろうとしていた。でも、45年ものあいだ、あまり手をかけられることがなく、顧みられることの少なかったその佇まいは、もしかしたら関係者やファンの手に、空疎な感触だけを残すことになったかもしれない。
「これだけお客さんが入ればつぶれなくてすんだのに」
 多くの人がそう考えたのではないか。
 一進一退を繰り返し、最後の「山形記念 樹氷賞」で勝負に出ることにした。
 馬連《6−10》に人気がかぶり、馬柱を見つめれば見つめるほど、その両馬で仕方ないような気がした。でも、ひとつの競馬場を見送る惜別の馬券としては、あまりに芸がないと思った。
 前に一度、かみのやま競馬へやって来た日のことを思い浮かべた。あいにくの雨となった最終日と違い、その時は見事なまでの青空が広がり、サラリーマン時代の貴重な休日をつぶしてやってきた僕を明るく迎えてくれた。わざわざ来た甲斐があったなあと、馬券で損をしなかったせいもあって、大いに満足したものだった。
 そんな回想も手伝ってか、6枠8番のセイウンリンクスにこの目が止まった。もちろん僕には「セイウン」が「青雲」に見えていた。下級条件で11連勝し、この日初めてオープンへ挑戦する上がり馬だった。最後のレースゆえ、これまで頑張ってきた馬を応援するのもひとつの手だが、ここで新星が登場し、これからへと期待をつなぐシーンを個人的には期待したかった。
 2300mという長距離戦で、セイウンは3コーナー手前から捲り気味にしかけていった。そして、先行して粘る一番人気のスパートクロスをとらえ、堂々と先頭でゴールした。セイウンから人気両馬へ5000円ずつ馬連を流していた僕には、これ以上はない結果となった。
 予想家の市丸博司さんと一緒に見ていた。予想のプロに、たまには自分の幸運を自慢してやろうと、笑顔で胸ポケットから馬券を取りだした。そこで気づいたのだ、《6−8、8−10》となっているはずの買い目が、《5−8、8−10》となっていることに……。まるで初心者のような買い間違えを、僕は犯していたのだ。
 足湯につかって15分、どうやら脇の下にじわりと汗をかいてきたようだ。手ぬぐいで足を拭きながら、あいかわらず変化の速い空を見上がると、鮮やかな青い色がこの目に飛び込んできた。
 ――やっぱりかみのやまはセイウンだなあ。
 買い間違えた馬券はなおも悔しかったが、いい思い出ができたじゃないかと、のんびりとした時間と引き換えに、自分を納得させることにした。
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今週の真券

かみのやま競馬最終レースで勝負!
11月11日・上山11R 樹氷賞
馬連 5−8 5000円
馬連 8−10 5000円
今週の結果 △10000円
(払い戻し 0円)

トータル +246100円
通算成績 4勝8敗

的中

11月11日・上山11R 樹氷賞 ダ2300m
着順
馬名
騎手
着差
1着
セイウンリンクス
前 野
2.32.0
2着
スパートクロス
関本淳
3着
タワリングドリーム
長 橋

単勝 (8) 1500円 複勝 (8) 210円 (6) 110円 (5) 270円
枠連 (5−6) 520円 馬連 (6−8) 760円
ワイド (6−8) 320円 (5−8) 890円 (5−6) 440円
馬単 (8−6) 2810円 3連複 (5−6−8) 2140円



心情馬券1万円真券勝負
「馬券とは感動を手にするためのツールだ」。ゆえに「心情馬券こそが究極である」という信念を持つ筆者が、それを実践すべく、自腹1万円で「心情馬券」を購入し、あわよくば“感動”と“実入り”(=的中馬券)を両取りしようという勇猛果敢な企画である。


筆者プロフィール
河村 清明 (かわむら きよあき)
写真 昭和37年、山口県宇部市生まれ。会社勤めを辞めた平成8年に「優駿エッセイ賞」 を受賞、以降、馬産地での取材活動を中心に執筆活動を展開している。
競馬歴は20年を数え、「心情馬券こそが究極の馬券」がモットー。現在、東京競馬場のすぐ近くに住んでいる。
著書に『三度怒った競馬の神様』(二見書房刊)、『JRA ディープ・インサイド−知られざる「競馬主催者」の素顔』(イースト・プレス刊)、『馬産地ビジネス−知られざる「競馬業界」の裏側』(イースト・プレス刊)、『蹄跡に刻む夢―仔馬と過ごした2年間』(メディアファクトリー刊)がある。
新刊 『三度怒った競馬の神様』
人と馬の結びつきを描いた9編の競馬ノンフィクション集。サンデーサイレンス亡き後の馬産地の現状、今なおオグリキャップへを愛し続ける笠松時代の馬主・小栗孝一氏へのインタビュー、ある家族牧場のダービーへの挑戦物語など、「泣ける話」から「考えさせられる話」までバラエティに富んだ内容は、河村さんが足で稼いだ賜物。競馬ファンなら絶対読むべし。


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